プロジェクト概要

日常言語コンピューティングのアイデアの実現を目指し、理化学研究所脳科学総合研究センター言語知能システム研究チーム(菅野道夫チームリーダー)において2000〜2005の5年間にわたり研究プロジェクトが行われました。研究チームは言語学者と工学研究者から構成され、プロジェクト期間中に日常言語コンピューティングを実現するコンピュータシステム(日常言語コンピューティングシステム)の基本構成の検討、基盤となる言語の意味処理技術の研究開発、そして応用システムのプロトタイプ開発がなされました。その成果は人工知能学会全国大会における特別セッションやデモ実演、国際機能言語学会議(ISFC)におけるワークショップを始めとする多くの学会、国際会議で発表され、高い評価を受けました。

理研におけるプロジェクトは終了しましたが、現在もプロジェクトのメンバーの多くはそれぞれの勤務先において日常言語コンピューティングと多かれ少なかれ関連した研究を継続して行っています。

参考文献:

研究チームのメンバー

研究スケジュール

表 1に、2000年に立案し、2001年に改訂したチームの研究計画を示す。 計画線表に見られるように、脳型の言語処理、言語利用に関する基本特許とその周辺特許を出願することも重要な目標とする。

表1:研究計画表
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研究成果

セミオティックベース

 セミオティックベースは、選択体系機能言語学(Systemic Functional Linguistics)に即して設計された言語知識のデータベースです。選択体系機能言語学は、言語を社会的記号の体系として捉えた上でコミュニケーションがいかに成り立っているのかという点に焦点を絞り、ことばが使われている社会や状況(コンテクスト)を詳細に検討し抽象化・体系化することにより、ことばが産出・理解されていく過程を明らかにしようとしている言語理論です。言語学の分野だけでなく、自然言語処理や人工知能といった分野でもシステムの基礎として援用されています(例えば、Winograd 1972)。  セミオティックベースは、以下の8つのコンポーネントから成り立っています。

コンテクストベース
 コンテクストベースは、言語が用いられているコンテクストを記述するための情報が格納されています。コンテクストベースのコンテンツを用いることによって、言語の意味や言い回しに影響が大きいコンテクストの特徴として、(1) 言語を用いて何が行われているのか(活動領域)、(2) 誰が参加しているのか(役割関係)、(3) どのような媒体を用いて言語がやりとりされているのか(伝達様式)に焦点をあてて、コンテクストを特徴づけることができます。これらのパラメータの組み合わせによって、コンテクストのタイプ(状況タイプ)を規定します。
ステージベース
 ステージベースには、特定の状況タイプに典型的な対話の流れ(ジャンル構造)が納められています。
知識ベース
 知識ベースには、特定の状況タイプにおいて参照される知識も含まれています。
意味ベース
 意味ベースには、ある状況タイプにおいてやりとりされる言語の意味を記述するための意味的特徴と、その状況タイプにおいて当該の意味を表現するために用いられる語彙文法的な手段に関する制約が納められています。意味ベースのコンテンツは、(1) 命題内容に関わる意味特徴(観念構成的意味)、(2) 発話行為などに関わる意味特徴(対人関係的意味)、(3) 修辞構造などに関わる意味特徴(テクスト形成的意味)に分かれて格納されています。
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語彙文法ベース
 語彙文法ベースには、日本語の文法に則した構文パタンや語句の選択を記述するための語彙文法的特徴とそれを文字列として具現するための表現手段に関する制約が納められています。
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表現ベース
 表現ベースは、現時点では音声には対応しておらず、書かれたテクストを解析することを目的に設計されています。句読法や文字列をどのように画面表示するかをHTMLなどで指定する際に利用することを想定しています。
汎用辞書
 汎用辞書は、EDR日本語単語辞書、共起辞書、概念辞書をベースに、選択体系機能言語学的な情報として語彙文法特徴、意味特徴などを語彙項目毎に格納したものです。以下に「書く」という見出し語の汎用辞書レコードの例を示します。
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状況特化辞書
 状況特化辞書は、特定の状況タイプにおいて用いられる語彙項目を格納したものです。汎用辞書とは異なり、状況タイプに関する情報が含まれています。以下に「変える」という見出し語の状況特化辞書レコードの例を示します。
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概念辞書
 概念辞書は、特定の状況タイプにおいて用いられる概念を体系化したものです。各概念はスロットを持ち、このスロットによって他の概念と関係づけられています。また、概念は上位概念と下位概念の項目を通じてその状況タイプの中で階層関係を形成し、ドメインオントロジーとして利用することができます。以下に「changing」という見出し概念の概念辞書レコードの例を示します。
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 概念は大きくspeech-act, domain-proposition, domain-conceptの3種類あり、クラス概念とインスタンス概念の区別がなされています。
コーパスベース
 コーパスベースには、テクストとともに状況特徴、意味特徴、語彙文法特徴、概念などの情報を注釈として付与して格納されています。なお、上記の知識ベースのコンテンツである状況タイプで参照される知識は、すべて言語で書かれており、このコーパスベースのコンテンツと同じく注釈付きテクストとして格納されています。

セミオティックベースを使ったテクスト解析と生成

 上記のコンポーネントに格納された情報を用いて、日本語テクストの解析と生成を行うシステムを開発しました。解析も生成も数種類の方法がありますが、以下では、メインの方法のみを説明します。

テクスト解析

 セミオティックベースのコンテンツを利用して、コンテクストを加味したテクスト解析アルゴリズムを設計しました。このアルゴリズムは、既存の選択体系機能言語学に依拠していないパーザと電子化辞書を用いて行われる部分(前処理)と、状況解析、表現解析、語彙文法解析、意味解析、概念解析から構成されます。処理の流れと解析処理の結果を以下に示します。

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テクスト生成

 セミオティックベースのコンテンツを利用して、コンテクストを加味したテクスト生成アルゴリズムを設計しました。このアルゴリズムは、生成すべき内容(what to say)を決定する処理と内容をどのような言い回しで表現するか(how to say)を決定する処理に大別できます。それぞれの処理の流れを以下に示します。

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プロトタイプシステム

セミオティックベースを使った言語の意味解析の有用性を実証するために、以下のような3種類の応用システムを開発しました。

スマートヘルプシステム
スマートヘルプシステムは、ユーザと対話しながらソフトウェア操作に関するヘルプを提供することを目的としたシステムであり、出力するヘルプの知識源としてソフトウェアに付属するマニュアルテキストを利用します。 スマートヘルプシステムの処理過程の概略を以下の図に示します。
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ユーザが質問を入力すると、まずセミオティックベースを使った入力テキストの理解処理が行われます。次に、事前に同様にテキスト理解処理を施したマニュアルテキストと、理解結果であるインスタンス構造のマッチングを行い、質問に最も合致したマニュアルテキストを選び出します。その後、選ばれたマニュアルテキストの全体的な修辞構造に基づき、ユーザに出力すべき内容が記述された部分を抽出し(修辞構造プランニング)、最後にユーザの知識レベルに応じた言い換えルールを適用して、マニュアルテキストをユーザに理解しやすい表現に変換した上で出力します。
言語プログラミングシステム
言語プログラミングシステムは、複雑な操作手順や実行条件を含む要求仕様を表現した自然言語テキスト(日常言語プログラムと呼ぶ)を入力として受け付けて、仕様に従ってソフトウェアの操作を実行するシステムです。次のテキストは、電子メールの整理を行う日常言語プログラムの例です。
理研の人から来たメールは「理研」フォルダに入れる。
理研の人のメールアドレスは、末尾に「.riken.jp」が付く。
研究室の人からのメールは、「研究室」フォルダに入れて自宅に転送する。
ただし、伊藤さん、高橋さん、小林さんからのメールでセミオティックベースに関するものは、「SB」という名前のフォルダに入れる。
この時、添付ファイルがあったらマイドキュメントの「SB」という名前のフォルダに保存する。
また、添付ファイルが文書ファイルの場合は、それを表示する。
ユーザが入力するこのようなテキストには、ソフトウェア操作に必要な対象や制御条件が必ずしも明確に記述されていないため、言語に関する知識を利用してそれらを明示化する必要があります。入力された日常言語プログラムに対して、まずセミオティックベースを使ってテキスト理解の処理を行い、各文のインスタンス構造とプログラム全体の修辞構造を同定します。次に、それぞれの文をソフトウェア実行に適した形に言い換える正規化の処理を行います。正規化は、日常的な言語表現をソフトウェア的な表現に対応付ける過程と考えることができ、事前に用意された換言規則を適用することにより行われます。 次に、入力テキストの修辞構造を考慮して、正規化の結果得られた文に処理の制御構造を加えて統合したテキスト(実行可能プログラムと呼ぶ)を生成します。生成された実行可能プログラムは、言語で表現された操作や条件、ものをソフトウェア上の対応物に結びつける機能と、条件判断、繰り返しなどの制御構造を表わす表現を解釈してソフトウェア操作の制御を行う機能を利用して、応用ソフトウェアの操作命令に逐次変換、実行されます。
言語ワードプロセッサ
言語ワードプロセッサは、文書作成に関するさまざまな知識を利用してユーザの文書作成作業を支援するシステムであり、ユーザは作成する文書についての希望や要求を日常的な言葉で与えることによって容易に文書作成を行うことができます。言語ワードプロセッサにおけるユーザと秘書の対話例を以下に示します。
ユーザ暑中見舞いを書きたい。
秘書暑中見舞いをどなたに送りますか?
ユーザ友人と会社の人です。
秘書暑中見舞いの文面を変えますか?
ユーザそうですね。
秘書まず友人宛の暑中見舞いを作ります。ワープロを起動します。
文書作成の作業手順は、他の種類の作業(例えば、メールの整理)の手順と異なるだけでなく、作成する文書の種類や内容によっても変わってきます。作業や作業対象の種類のように言語使用や対話の構造に影響を与える要素を、日常言語コンピューティングでは、コンテクストベース内の状況特徴の組み合わせとして表される状況タイプによって特徴付けます。コンテクストベース内のステージベースには、状況タイプごとにジャンル構造と呼ばれる、その状況における典型的な発話やソフトウェア操作の順序を表した構造が納められています。 ジャンル構造は複数のステージ(場面)から構成され、ステージは複数のムーブ(発話または操作)から構成されます。このような状況に関する知識を利用して、ユーザの入力文から作業の状況タイプ(この例では「暑中見舞いの作成」)を同定し、適当な応答の内容を決定し出力するとともに、実行すべきワープロ操作の内容を決定、実行していきます。

理研コーパス

 2001年6月から2002年12月にかけて日常的なコンピュータの使用にかかわる被験者実験を行い、対話音声データを収集しました。実験は、ワープロ使用に関するユーザとインストラクターとの質疑応答、およびコンピュータを使ったユーザの文書作成の支援です。実験の内容は、回ごとに少しずつ異なりますが、質疑応答型と依頼応対型とに分けることができます。質疑応答型においては、ユーザが自ら文書を作成し、操作方法に関してインストラクターに質問しました。依頼応対型では、ユーザは直接文書を作成せずに文書の内容に関する指示を秘書に与えて文書を作成してもらいました。  これらの実験で収集された対話データを基に、書き起こしコーパスと形態素解析情報付きデータベースを作成しました(高橋他2004)。このコーパスと形態素解析情報付きデータベースは、音声資源コンソーシアムから入手していただけるよう現在準備を進めています。

LBISシステミックツール

 LBISシステミックツールは、選択体系機能言語学に基づく日本語テキスト理解・生成のための資源開発支援ツールです。

コーダー
選択体系網と具現規則を参照しながら手作業でテキストの分析(コーディング)を行うためのツール
注釈付きテキストツール
セミオティックベースを使ってテキストの分析を行い、結果の出力や表示を行うツール
KWICコンコーダンサー
テキスト分析の結果を複数個読み込んで条件検索を行ったり、その結果を並べ替えたりするためのツール
概念辞書エディタ
セミオティックベース内の概念辞書データを作成するためのツール

 日本語テキストの分析結果は注釈付きテキストと呼ばれる一般的なデータ構造で表現され、また、各ツールはセミオティックベースのデータが完全に揃っていなくても動作可能であることから、セミオティックベースの開発や応用に従事する方はもちろん、一般の選択体系機能言語学・日本語学、自然言語処理研究を行う研究者にとっても本ツールは有用であると思われます。

発表論文

国際学術誌論文

  1. Yamanoi T., Saito M., Sugeno M. and Sanchez E.: “Difference in area of the brain for fuzzy and crisp calculations”, J. Adv. Comput. Intell. 6, 51-55 (2002).
  2. Kobayashi I., Chang M. S., and Sugeno M.: “A study on meaning processing of dialogue with an example of development of travel consultation system”, Int. J. Inf. Sci. 144, 45-74 (2002).
  3. Kobayashi I. and Sugeno M.: “An approach to a dynamic system simulation based on human information processing”, Int. J. Uncertainty, Fuzziness and Knowledge-Based Syst. 10, 611-633 (2002).
  1. Kobayashi I., Sugimoto T., Iwashita S., Iwazume M., Ozawa J., and Sugeno M.: “A new communication method using natural language as a computer communication protocol”, J. Adv. Comput. Intell. 7, 215-222 (2003).
  1. Sugeno M. and Taniguchi T.: “On improvement of stability conditions for continuous Mamdani-like fuzzy systems”, IEEE Trans Systems, Man and Cybernetics B 34, No.1, 120-131 (2004).

国際会議論文集

  1. Kobayashi I., Iwazume M., and Sugeno M.: “Language protocol for everyday language computing”, 2001 IEEE Int. Fuzzy Systems Conf. Proc., Melbourne, Australia, 1299-1302 (2001).
  2. Kobayashi I., Iwazume M., Ozawa J., Sugimoto T., Iwashita S., and Sugeno M.: “Toward computer communication using natural language”, Proc. 2nd Vietnam-Japan Bilateral Symp. on Fuzzy Systems and Applications, Hanoi, Vietnam, 305-311 (2001).
  1. Yamanoi T., Saito M., Sugeno M., and Sanchez E. : “Difference of area of the brain for fuzzy and crisp calculations“, Proc. 9th Int. Conf. on Information Processing and Management of Uncertainty in Knowledge-Based Systems, Annecy, France, 377-381 (2002).
  2. Kobayashi I., Sugimoto T., Iwashita S., Iwazume M., Ozawa J., and Sugeno M.: “A new communication method using natural language as a computer communication protocol”, Proc. SCIS & ISIS 2002 (CD-ROM), Tsukuba, 24B1-6 (2002).
  3. Sugimoto T., Ito N., Fujishiro H., and Sugeno M.: “Dialogue management with the Semiotic Base: A systemic functional linguistic approach”, Proc. SCIS & ISIS 2002 (CD-ROM), Tsukuba, 24B1-3 (2002).
  4. Iwashita S., Sugimoto T., Ito N., Kobayashi I., Iwazume M., Takahashi Y., and Sugeno M.: “A client model in everyday language computing”, Proc. SCIS & ISIS 2002 (CD-ROM), Tsukuba, 24B1-2 (2002).
  1. Iwashita S., Kobayashi I., Ito N., Sugimoto T., and Sugeno M.: “Personalization of help system output in the framework of everyday language computing”, Knowledge-Based Intelligent Information and Engineering Systems: Proc. 7th Int. Conf. (KES2003), Oxford, United Kingdom, 439-445 (2003).
  1. Ito N., Sugimoto T., and Sugeno M.: “A systemic-functional approach to Japanese text understanding”, Computational Linguistics and Intelligent Text Processing: Proc. 5th Int. Conf. (CICLing 2004), Seoul, Korea, 26-37 (2004).
  2. Sugimoto T., Ito N., Iwashita S., and Sugeno M.: “Towards programming in everyday language: a case for email management”, Computational Linguistics and Intelligent Text Processing: Proc. 5th Int. Conf. (CICLing 2004), Seoul, Korea, 383-394 (2004).
  3. Taniguchi T. and Sugeno M.: “Stabilization of nonlinear systems based on piecewise Lyapunov functions”, Proc. Int. Joint Conf. on Neural Networks (I JCNN 2004)/IEEE Int. Conf. on Fuzzy Systems (FUZZ-IEEE 2004)(CD-ROM), Budapest, Hungary,CDR-1- CDR-6 (2004).
  4. Ito N., Sugimoto T., Iwashita S., Kobayashi I., and Sugeno M.: “A model of rhetorical structure analysis of Japanese texts and its application to intelligent text processing: a case for a smart help system”, Lecture Notes in Artificial Intelligence: Proc. 8th Pacific Rim Int. Conf. (PRICAI 2004), Auckland, New Zealand, 981-982 (2004).
  5. Takahashi Y., Kobayashi I., Iwazume M., Ito N., and Sugeno M.: “The contents and structure of the Context Base, and its application”, Advances in Natural Language Processing: Proc. 4th Int. Conf. (EsTAL 2004), Alicante, Spain, 103-114 (2004).
  6. Iwashita S., Ito N., Kobayashi I., Sugimoto T., and Sugeno M.: “Everyday language help system based on software manual”, Proc. 2004 IEEE Int. Conf. on Systems, Man and Cybernetics (SMC) (CD-ROM), Hague, The Netherlands, 3635-3640 (2004).
  7. Sugimoto T., Ito N., Iwashita S., and Sugeno M.: “Script generation using rhetorical information in a task specification text”, Proc. 2004 IEEE Int. Conf. on Systems, Man and Cybernetics (SMC) (CD-ROM), Hague, The Netherlands, 2687-2692 (2004).
  8. Ito N., Sugimoto T., Iwashita S., Kobayashi I., and Sugeno M.: “A model of rhetorical structure analysis of Japanese instructional texts and its application to a smart help system”, Proc. 2004 IEEE Int. Conf. on Systems, Man and Cybernetics (SMC) (CD-ROM), Hague, The Netherlands, 3641-3646 (2004).
  9. Iwazume M., Kobayashi I., and Sugeno M.: “Natural language mediated software control”, Proc. 2004 IEEE Int. Conf. on Systems, Man and Cybernetics (SMC) (CD-ROM), Hague, The Netherlands, 5560-5566 (2004).

国際会議発表

  1. Sugeno M. and Ito N.: “Philosophical and linguistic issues on everyday language computing”, 8th Int. Conf. on Information Processing and Management of Uncertainty in Knowledge-based Systems, (Consejo Superior de Investigaciones Cientificas), Madrid, Spain, July (2000).
  1. Ito N., Takahashi Y., Fujishiro H., and Sugeno M.: “An analysis of tenor influences on register in semantics and lexicogrammar of Japanese”, 28th Int. Systemic Functional Congr., Ottawa, July (2001).
  2. Takahashi Y., Fujishiro H., Ito N. and Sugeno M.: “The situation base and registers: A preliminary investigation for constructing the semiotic base for everyday language computing”, 28th Int. Systemic Functional Congr., Ottawa, July (2001).
  3. Fujishsiro H., Ito N., Takahashi Y., and Sugeno M.: “How difference in mode influences conversations in Japanese: Toward everyday language computing”, 28th Int. Systemic Functional Congr., Ottawa, July (2001).
  4. Kobayashi I., Iwazume M., Sugeno M., and Ito N.: “Toward a computational environment for everyday language communication”, Joint 9th IFSA World Congr. and 20th NAFIPS Int. Conf., (International Fuzzy Systems Association), Vancouver, Canada, July (2001).
  1. Ito N., Fujishiro H., Takahashi Y., and Sugeno M.: “An analysis of grammatical metaphor of Japanese: where we can find similarity and difference in meaning among grammatical metaphorical expressions”, 29th Int. Systemic Functional Linguistics Congr., (ISFC 29), Liverpool, U.K., July (2002).
  2. Takahashi Y., Ito N., Fujishiro H., and Sugeno M.: “What is necessary for dealing with the context?”, 29th Int. Systemic Functional Linguistics Congr. (ISFC 29), Liverpool, U.K., July (2002).
  1. Ito N., Sugimoto T., Takahashi Y., Kobayashi I., and Sugeno M.: “A systemic-functional approach to Japanese text understanding”, 30th Int. Systemic Functional Linguistics Congr., Lucknow, India, Dec. (2003).
  2. Takahashi Y., Kobayashi I, Sugimoto T., Ito N., and Sugeno M.: “Text generation with the Semiotic Base: a systemic-functional approach”, 30th Int. Systemic Functional Linguistics Congr., Lucknow, India, Dec. (2003).

国際会議特別講演

  1. Sugeno M.: “Stability and stabilization of Mamdani-like fuzzy systems”, Pioneer Speech, The Ninth IEEE International Conference on Fuzzy Systems, San Antonio, USA (2000.5).
  2. Sugeno M.: “Language-based computing systems toward development of brain-style intelligent architecture”, 1st Int. Conf. on Intelligent Technologies, Bangkok, Thailand (2000.12).
  1. Sugeno M.: “Everyday language computing: Toward brain-style computer architecture”, World Scientific and Engineering Society 2001 Int. Conf. on Fuzzy Sets and Fuzzy Systems, Tenerife, Spain (2001.2).
  2. Sugeno M.: “Language-based computing environment for internet communication between the brain and society”, Joint 9th IFSA World Congress and 20th NAFIPS International Conference, Vancouver, Canada (2001.7).
  3. Sugeno M.: “Development of an aerial robot toward real applications”, IFAC Workshop on Advanced Fuzzy /Neural Control 2001, Valencia, Spain (2001.10).
  4. Sugeno M.: “Verbalization of computers toward brain computing architecture”, An Interdisciplinary Conference –Language, Brain, and Culture, Sydney, Australia (2001.10).
  1. Sugeno M.: “Verbalizing computers: A way to everyday language computing”, AFSS 2002 Int. Conf. on Fuzzy Systems, Calcutta, India (2002.2).
  1. Sugeno M.: “Systemic functional Linguistic approach to Creating the Brain”, 31st International Systemic Functional Congress, Kyoto (2004.9).

国内学術誌論文

  1. 張文秀,小林一郎,菅野道夫:“旅行相談を例にした対話における意味処理に関する研究”, 日本ファジイ学会誌 13, 70-87 (2001).
  2. 伊藤紀子, 小林一郎, 菅野道夫: “セミオティックベースとそれを利用したテクスト処理について”, JASFL Occasional Papers 2, No.1, 63-71 (2001).
  1. 岩爪道昭, 小林一郎, 伊藤紀子, 高橋祐介, 藤城浩子, 菅野道夫: “日常言語コンピューティング: 言語現象の社会的・機能的解明と日常言語オペレーティングシステムの実現に向けて”, 人工知能学会論文誌 17, 181-185 (2002).
  2. 小林一郎, 岩爪道昭, 杉本徹, 岩下志乃, 小沢順, 菅野道夫: “自然言語をコンピュータの通信プロトコルにする研究”, 日本ファジイ学会誌 14, 491-502 (2002).
  1. 岩爪道昭, 小林一郎, 杉本徹, 岩下志乃, 高橋祐介, 伊藤紀子, 菅野道夫: “日常言語コンピューティング(第2報): 日常言語に基づく計算機資源の管理・実行を目指して”, 人工知能学会論文誌 18, 45-56 (2003).
  1. 伊藤紀子, 杉本徹, 菅野道夫: “選択体系機能言語学に基づく日本語テクスト理解システムの実装”, JASFL Occasional Papers 3, No.1, 189-206 (2004).
  2. 高橋祐介, 小林一郎, 菅野道夫: “タスク解決に関する対話における修辞構造を用いたステージの規定”, JASFL Occasional Papers 3, No.1, 209-224 (2004).

国内会議発表

  1. 菅野道夫: “日常言語コンピューティングに向けて”, 第10回インテリジェント・システム・シンポジウム, (日本ファジイ学会), 東京, 10月(2000).
  2. 岩爪道昭, 菅野道夫: “状況ベース構築のためのオントロジー工学的アプローチ”, 日本機能言語学会第8回秋期大会, 西宮, 11月(2000).
  3. 伊藤紀子, 小林一郎: “選択体系機能言語学的観点からの日本語テクストの意味分析: 日本語意味ベースの構築に向けて”, 日本機能言語学会第8回秋期大会, 西宮, 11月 (2000).
  1. 伊藤紀子, 藤城浩子, 高橋祐介, 岩爪道昭, 小林一郎, 菅野道夫: “人間同士の対話と人間: コンピュータ間の対話の対照分析およびその対話処理技術への応用”, 言語処理学会第7回年次大会, 東京, 3月(2001).
  2. 藤城浩子, 高橋祐介, 伊藤紀子, 菅野道夫: “コンピュータ・ユーザとサポーターの対話におけるジャンル構造と語彙文法的特徴”, 日本機能言語学会第9回秋期大会, 仙台, 10月(2001).
  3. 伊藤紀子, 藤城浩子, 高橋祐介, 菅野道夫: “コンピュータ・ユーザーとサポーターの対話におけるジャンル構造の分析: 対話型ヘルプシステム構築に向けて”, 日本機能言語学会第9回秋期大会, 仙台, 10月(2001).
  4. 高橋祐介, 伊藤紀子, 藤城浩子, 菅野道夫: “状況ベースを使ったテクストの理解と生成: 日常言語コンピューティングにおける状況のコンテクストの取り扱いに関する一考察”,日本機能言語学会第9回秋期大会, 仙台, 10月(2001).
  1. 藤城浩子, 伊藤紀子, 高橋祐介, 菅野道夫: “日本語のTheme: 選択体系機能言語学の立場から”, 言語処理学会第8回年次大会, 京都, 3月(2002).
  2. 岩下志乃, 岩爪道昭, 小林一郎, 杉本徹, 菅野道夫: “日常言語コンピューティングにおけるクライアントモデルの提案”, 第16回日本人工知能学会全国大会, 東京, 5月(2002).
  3. 高橋祐介, 伊藤紀子, 藤城浩子, 菅野道夫: “セミオティックベースにおけるコンテクスト層の検討”, 第16回日本人工知能学会全国大会, 東京, 5月(2002).
  4. 小林一郎, 岩爪道昭, 杉本徹, 岩下志乃, 菅野道夫: “自然言語をコンピュータの通信規約にした通信手法の提案”, 第16回人工知能学会全国大会, 東京, 5月(2002).
  5. 杉本徹, 岩下志乃, 岩爪道昭, 小林一郎, 菅野道夫: “日常言語OSのための対話管理とアプリケーションインターフェースの試作”, 第16回人工知能学会全国大会, 東京, 5月(2002).
  6. 杉本徹, 岩爪道昭, 小林一郎, 岩下志乃, 菅野道夫: “秘書エージェントのための対話管理とその適応機能”, 第16回人工知能学会全国大会, 東京, 5月(2002).
  7. 岩下志乃, 杉本徹, 小林一郎, 岩爪道昭, 菅野道夫: “ユーザー秘書エージェントの対話におけるクライアントモデルの利用”, 第18回ファジイシステムシンポジウム, (日本ファジイ学会), 名古屋, 8月 (2002).
  8. 谷口唯成, 菅野道夫: “Type?ファジイシステムの安定化制御”, 第18回ファジイシステムシンポジウム, (日本ファジイ学会), 名古屋, 8月(2002).
  9. 菅野道夫: “非線形システムの区分的パラメトリック近似モデルとリヤプノフ安定条件”, 第31回制御理論シンポジウム, (計測自動制御学会), 葉山, 10月(2002).
  10. 伊藤紀子, 高橋祐介, 菅野道夫: “セミオティックベース構築のために既存の日本語電子化辞書を最大限に活用する方法”, 日本機能言語学会第10回秋期大会, 京都, 10月(2002).
  11. 高橋祐介, 伊藤紀子, 小林一郎, 菅野道夫: “日常言語コンピューティングにおける知 識の取り扱い”, 日本機能言語学会第10回秋期大会, 京都, 10月(2002).
  12. 杉本徹, 岩下志乃, 岩爪道昭, 小林一郎, 高橋祐介, 伊藤紀子, 菅野道夫: “秘書エージェントのための状況依存対話モデル”, エージェント合同シンポジウム(JAWS2002), (電子情報通信学会、日本ソフトウェア科学会), 北海道亀田郡七飯町, 11月(2002).
  1. 高橋祐介, 小林一郎, 伊藤紀子, 菅野道夫: “修辞構造とジャンル構造を用いたテクスト・プランニング”, 言語処理学会第9回年次大会, 横浜, 3月(2003).
  2. 岩爪道昭, 小林一郎, 高橋祐介, 菅野道夫: “自然言語を媒介としたソフトウェア制御のための意味マッチング方式の検討”, 第17回人工知能学会全国大会, 新潟, 6月(2003).
  3. 岩下志乃, 小林一郎, 伊藤紀子, 杉本徹, 菅野道夫: “日常言語によるヘルプ出力の個人化について”, 第17回人工知能学会全国大会, 新潟, 6月(2003).
  4. 杉本徹, 岩爪道昭, 小林一郎, 伊藤紀子, 高橋祐介, 岩下志乃, 菅野道夫: “セミオティックベースを使った日常言語アプリケーションシステム”, 第17回人工知能学会全国大会, 新潟, 6月(2003).
  5. 伊藤紀子, 杉本徹, 高橋祐介, 小林一郎: “セミオティックベースを使ったテキスト処理アルゴリズム”, 第17回人工知能学会全国大会, 新潟, 6月(2003).
  6. 谷口唯成, 菅野道夫: “区分的リアプノフ関数による非線形システムの安定化”, 第19回ファジイシステムシンポジウム, (日本知能情報ファジイ学会、他), 堺, 9月(2003).
  7. 伊藤紀子, 杉本徹, 菅野道夫: “選択体系機能言語学に基づく日本語テクスト理解システムの実装”, 日本機能言語学会第11回秋期大会, 町田, 10月(2003).
  8. 高橋祐介, 小林一郎, 杉本徹, 菅野道夫: “セミオティックベースによるテクスト生成”, 日本機能言語学会第11回秋期大会, 町田, 10月(2003).
  9. 谷口唯成, 菅野道夫: “区分的リアプノフ関数による区分的近似非線形システムの安定化制御”, 第32回制御理論シンポジウム, ((社) 計測自動制御学会), 浜松, 11月(2003).
  1. 高橋祐介, 岩下志乃, 伊藤紀子, 岩爪道昭, 杉本徹, 小林一郎, 菅野道夫: “理研話し言葉コーパスの概要とその利用法の一例”, 言語処理学会第10回年次大会, 東京, 3月(2004).
  2. 伊藤紀子, 杉本徹, 岩下志乃, 岩爪道昭, 高橋祐介, 小林一郎, 菅野道夫: “セミオティックベースを使った日常言語アプリケーションシステム 第2報”, 第18回人工知能学会全国大会, 金沢, 5-6月 (2004).
  3. 岩下志乃, 伊藤紀子, 小林一郎, 杉本徹, 菅野道夫: “マニュアルテキストを用いた個人化ヘルプシステム”, 第18回人工知能学会全国大会, 金沢, 5-6月 (2004).
  4. 杉本徹, 伊藤紀子, 岩下志乃, 菅野道夫: “日常言語によるプログラミング”, 第18回人工知能学会全国大会, 金沢, 5-6月 (2004).
  5. 高橋祐介, 小林一郎, 岩爪道昭, 菅野道夫: “コンテクストベースのコンテンツと構造:セミオティックベースにおけるコンテクスト層の再検討”, 第18回人工知能学会全国大会, 金沢, 5-6月 (2004).
  6. 岩爪道昭, 小林一郎, 高橋祐介, 菅野道夫: “状況を考慮したソフトウェア制御のための動的意味マッチング”, 第18回人工知能学会全国大会, 金沢, 5-6月 (2004).

その他(解説)

  1. 谷口唯成, 菅野道夫: “タイプ?ファイジイモデルによる非線形システムの解析”, 日本ファジイ学会誌14, 348-356 (2002).
  1. 菅野道夫: “脳型コンピュータにおけるテクスト理解”, 日本知能情報ファジイ学会誌 16, No.6 (2005).

特許出願

  1. 日常言語コンピューティングシステムおよびその方法
    (Everyday language-based computing system and method)
    菅野道夫、小林一郎、伊藤紀子、岩爪道昭
    出願番号 2001-033464、2001年2月、国内
    出願番号 10/067,788、 2002年2月、 USA
    出願番号 02002885.8、 2002年2月、 E.P.C
  2. 言語コンピューティング、言語処理方法、ならびにプログラム
    伊藤紀子、高橋祐介、藤城浩子
    出願番号 2002-154688、2002年5月、国内
  3. 日常言語を用いる通信システム、送信側クライアント秘書装置、受信側クライアント秘書装置、言語アプリケーション装置、送信側クライアント秘書方法、受信側クライアント秘書方法、言語アプリケーション方法、ならびに、プログラム
    岩爪道昭、小林一郎、菅野道夫
    出願番号 2002-154823、2002年5月、国内
  4. 日常言語コンピュータシステムで用いられる秘書エージェントシステム、秘書エージェントプログラム および対話プランニング方法
    岩下志乃、杉本徹、菅野道夫
    出願番号 2002-304842、2002年10月、国内
  5. 日常言語プログラム処理システム、その方法および修辞構造解析方法
    杉本徹、伊藤紀子、菅野道夫
    出願番号 2004-036460、2004年4月、国内

評価

人工知能学会

近未来チャレンジセッション

人工知能学会全国大会では、近未来チャレンジ(Challenge for Realizing Early Profits)と称して、5年以内で社会貢献できる現実路線の人工知能技術を募集し、優れたものを学会としてサポートすることにより、強力なAI技術を世の中に送り出すことを目的としたコンペティション形式のセッションを開催している。コンペティションの形式は、毎年、応募者に自らのアイディアを提案してもらい、その評価を聴衆からのアンケート、および、大会担当者らの評価に基づき、上位5つの課題のチャレンジャーに対して、次年度の全国大会でのワークショップを開催する権利を与えるというものである。

第15回人工知能学会「近未来チャレンジセッション」

本研究は、2001年5月22日(火)〜25日(金)に松江 島根県民会館にて開催された第15回人工知能学会全国大会において、「近未来チャレンジ」セッションにニュー・チャレンジとして「日常言語コンピューティング」というテーマで応募された。当大会において、当該セッションにおいては、「ニュー・チャレンジ」7件、そして2000年度全国大会(第14回人工知能学会全国大会)にて残ったチャレンジの「サバイバル」 4セッションが行なわれ、コンペティションが行われた。

第15回人工知能学会全国大会「近未来チャレンジ」における結果は、以下のようであった。

•サバイバル・オブ・チャレンジ

チャレンジャーテーマ
藤本 和則 (FRP) 他ネット情報を使った意思決定支援
矢入 郁子(通信総合研究所) 他高齢者・障害者の自立的移動を支援するRobotic Communication Terminals

•ニュー・チャレンジ

チャレンジャーテーマ
石田 亨(京都大学)インタラクション設計言語Qの提案
松原 仁(公立はこだて未来大学) 他大規模災害救助シミュレータを対象としたリアルタイム実況の自動生成
岩爪 道昭(理化学研究所脳科学総合研究センター) 他日常言語コンピューティング

前年度から勝ち残っていた4件のチャレンジャーのうち、2件のみが生き残り、新たに3件のニュー・チャレンジが上位5件の内に入った。 当研究チームは、3件のニュー・チャレンジのうちの一つとして選ばれ、次年度の人工知能学会全国大会にてワークショップを開催する権利が与えられた。

評価結果において5位が、本研究テーマである「日常言語コンピューティング(LOS:言語OS)」であり、聴衆によるアンケートQ1「5年以内にできるか?」という質問に対しては、消極的な回答が多かったが、他のアンケートQ2「社会貢献になるか?」、アンケートQ3「AIに貢献するか?」という質問に対しては、他のテーマには見られないような高得点を有し、AI研究者たちからの関心の高さが伺い知れる。

第16回人工知能学会全国大会「近未来チャレンジセッション」

第16回人工知能学会全国大会は、2002年5月29日(水)〜31日(金)に国立情報学研究所にて開催された。本研究チームは、5月31日(金)午前中に、「近未来:LOS(Language Operating System)というセッションを開催し、9件の口頭発表(当研究チームからの発表が4件、外部から「近未来:LOS」セッションへの投稿が5件と、当研究セッションへの外部からの関心の高さがわかる) 、および、口頭発表終了後、パネルディスカッションを開催した。

この他に、前日の5月30日(木)における「デジタルポスタ1」セッションにて、以下の発表がなされ、言葉でアプリケーションソフトウェアを操作するデモを紹介した。

昨年度のセッションにて、日常言語コンピューティングの構想を紹介したのに対して、本年度は、日常言語コンピューティングの「言葉で情報処理を行う」という基本的なコンセプトを理解してもらうために、アプリケーションソフトウェア(Java ワードプロセッサ)を対話的に操作するデモシステムを作成し、デジタルポスタセッションにて紹介した。これを通じて、日常言語コンピューティングの概要について説明する機会をもった。

第16回人工知能学会全国大会「近未来チャレンジ」における結果は、以下のようであった。

•サバイバル・オブ・チャレンジ

チャレンジャーテーマ
藤本 和則(FRP)他ネット情報を使った意思決定支援
矢入(江口)郁子(通信総合研究所)他高齢者・障害者の自立的移動を支援するRobotic Communication Terminals
石田 亨(京都大学)、松原 仁(公立はこだて未来大学)他危機管理シミュレーションとその分析
岩爪 道昭(理化学研究所)他日常言語コンピューティング

•ニュー・チャレンジ

チャレンジャーテーマ
片寄 晴弘(関西学院大, 科技団さきがけ研究), 平田 圭二(NTT), 他事例に基づくデザイン支援と評価基盤の構築

サバイバル・オブ・チャレンジにおいて、4件のチャレンジャーが勝ち残ったが、これは、前年度から勝ち残っていた5件のうち、2つのセッション(「インタラクション設計言語Qの提案」、「大規模災害救助シミュレータを対象としたリアルタイム実況の自動生成」)が共同研究となり、ひとつのセッションになったため、実質、昨年度勝ち残ったチャレンジャーはすべて今年度も勝ち残ったことになった。また、ニュー・チャレンジ1件が採択された。

当研究テーマLOSは、生き残れる上位5件のうち、最後の5位で勝ち残ることができた。上位5位のうち5番目という順位ではあるが、勝ち残りをした他4件のうち、3件とはほぼ同じ得点を得ており、勝ち残れなかったテーマの得点とは大きく離れていた。

第17回人工知能学会「近未来チャレンジセッション」

第17回人工知能学会全国大会は、2003年6月23日(月)〜27日(金)に新潟 朱鷺メッセにて開催された。本研究チームは、6月27日(金)午前中に、「近未来チャレンジ:日常言語コンピューティング」というセッションを開催し、6件の口頭発表、および、口頭発表終了後、座長による総括を行うセッションを開催した。

当研究チームからの発表が3件、外部からの発表が3件の計6件の発表が行われた。それぞれの発表内容の日常言語コンピューティングの枠組みへの関連を図1に示す。

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図1 各研究内容の日常言語コンピューティングの枠組みへの関係

図1は、日常言語コンピューティングの基本的な3つの原理である、「言語化」、「個人化」、「人間化」に対して、当セッションにて発表がなされた研究内容がどのように位置づけられるのかについて示している。 (伊藤et al.)や(山口 et al.)による研究内容は、3つの原理のひとつである「言語化」について近いものが発表された。(伊藤 et al)は、状況に応じて様々な意味を作り出す言語体系資源の構築における発表内容であり、(山口 el al)は人が利用するレベルのオントロジーを言葉で表現する考察を行った発表内容であり、双方の発表内容は、言語をいかにコンピューティングのための資源として利用するかについてのものであった。 また、「言語化」とは少し離れるが、(岩爪 et al)および(池ヶ谷 et al)らの発表内容は、(岩爪 et al)においては、マッチングの手法に言語を媒介にして柔軟なマッチングをおこなう手法を提案し、(池ヶ谷 et al)においては、自然言語の意味を統一的に表現できる形式を提案し、文脈の処理を柔軟に行う手法を提案した。双方の発表内容は、言語を情報処理のなかにおいて柔軟に利用するための表現形式について考察をおこなったものとみなすことができる。また、(山田 et al)では、携帯端末の操作を簡単な言葉を話すような感覚で操作できる手法を提案しており、万人が使っている言葉を機器操作のためのインタフェースとして取り入れる考えを提案した。これは、(岩下 et al.)による研究発表と対極をなすものとして位置づけられ、(岩下 et al.)では、言葉の使用の仕方から機器操作における個人の習熟度を判別し、それに基づきテーラーメイドの情報提示をおこなう手法を提案した。これは、日常言語コンピューティングのひとつの原理である「個人化」を実現する手法として提案されている。また、本来、発表予定であった(高田 et al.)においては、分散環境における通信を自然言語インタフェースを用いて、言葉で通信をおこなう手法を提案したものが報告される予定であったが、残念なことに発表がキャンセルになってしまった。この研究内容は、今回、発表されなかったが、日常言語コンピューティングの基礎的な技術のひとつである、言語プロトコル(―コンピュータの通信規格を自然言語にする―)研究(小林 et al.)と極めて近い研究であり、通信における規約フリー、およびエージェント間通信のプロトコルを自然言語にする通信の言語化について多くの研究者たちが興味をもっていることが伺い知れる。

第17回人工知能学会全国大会「近未来チャレンジ」における結果は、以下のようであった。

•サバイバル・オブ・チャレンジ

矢入(江口)郁子(通信総合研究所)他高齢者・障害者の自立的移動を支援する Robotic Communication Terminals
石田 亨(京都大学)、松原 仁(公立はこだて未来大学)他危機管理シミュレーションとその分析
岩爪 道昭(理化学研究所)他日常言語コンピューティング
片寄 晴弘(関西学院大学, 科技団さきがけ研究21) 他事例に基づくデザイン支援と評価基盤の構築

•ニュー・チャレンジ

古川 康一 (慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科)他身体知の解明を目指して

サバイバル・オブ・チャレンジにおいて、前年度勝ち残った5件のチャレンジのうち、藤本 和則(FRP他)によるチャレンジが選考から外れ、その他4件のチャレンジャーが勝ち残った。また、新たにニュー・チャレンジ1件が採択された。

第18回人工知能学会全国大会「近未来チャレンジ」セッション

第18回人工知能学会全国大会は、2004年5月31日(月)〜4日(金)に金沢 石川厚生年金会館にて開催された。本研究チームは、6月4日(金)午後に、「近未来チャレンジ:日常言語コンピューティング」というセッションを開催し、8件の口頭発表、および、口頭発表終了後、座長による総括を行うセッションを開催した。

それぞれの発表内容の日常言語コンピューティングの枠組みへの関連を図2に示す。

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図2 各研究内容の日常言語コンピューティングの枠組みへの関係

図2は、図1と同様に、日常言語コンピューティングの基本的な3つの原理である、「言語化」、「個人化」、「人間化」に対して、当セッションにて発表がなされた研究内容がどのように位置づけられるのかについて示している。 今回、前回と同様に、(池ヶ谷 et al.)、および(岩爪 et al.)は、昨年度の内容をさらに発展させたものを発表した。(高橋 et al.)は、昨年度(伊藤 et al.)が言語体系の意味、語彙文法の資源の構築について研究発表したのに対して、それら意味、語彙文法資源を利用するために言語体系を取り巻く状況をどのように利用するかについての枠組みを提案した。また、状況を利用するという趣旨において、(角田 et al.)は、状況に応じて意味を捉える検索手法を提案した。また、(杉本 et al.)、および、(金子 et al.)では、言葉でプログラムを作成する手法を提案しており、これらの研究は、言語をある形式(この場合、プログラム言語)に代わる表現手段として利用しているといえる。また、(岩下 et al.)は、昨年に引き続き、ユーザにとってテーラーメイドの情報を提供できるような手法を提案し、実際にユーザが操作に困ったときに、ユーザの習熟度に合わせて、MS Wordのヘルプを言い換え技術などを利用し、修正して適切なインストラクションを提供するヘルプシステムを開発し、その報告をおこなった。(R. Zepka et al.)は、Web上の情報から知識のマイニングなどを行い、多量の知識を収集し、常識などの知識をもった人格をコンピュータの上につくりだしていこうという試みについて提案がなされた。このことは、日常言語コンピューティングの3つの基本原理のひとつである「人間化」を実現する試みをもった研究であるといえる。

第18回人工知能学会全国大会「近未来チャレンジ」における結果は、以下のようであった。

•サバイバル・オブ・チャレンジ

チャレンジャーテーマ
矢入(江口)郁子(情報通信研究機構)他高齢者・障害者の自立的移動を支援する Robotic Communication Terminals
石田 亨(京都大学)、松原 仁(公立はこだて未来大学)他危機管理シミュレーションとその分析
岩爪 道昭(理化学研究所)他日常言語コンピューティング
片寄 晴弘(関西学院大学, 科技団さきがけ研究21) 他事例に基づくデザイン支援と評価基盤の構築
古川 康一 (慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科)他身体知の解明を目指して

•ニュー・チャレンジ

残念ながら、今年度は選択されませんでした。

サバイバル・オブ・チャレンジにおいて、昨年度、勝ち残った5件のチャレンジャーがそのまま勝ち残り、新たなニュー・チャレンジは採択されない結果に終わった。今年度は、ニュー・チャレンジが1件のみと例年にない少ない応募数であった。

聴衆によるアンケートから「日常言語コンピューティング」感想として以下のような声が聞かれた。
1.今年のテーマである状況・文脈に関連した発表が多く集まり、昨年よりもさらに進んだ議論が行われたように思う。
2.今後きわめて重要性が増す研究分野である。是非継続して欲しい。
3.自然言語処理セッションとの相違が不明確で日常言語ならでは、という訴求点が見えにくい。その点を是非クリアにして欲しい。

第19回人工知能学会全国大会「近未来チャレンジ」セッション

第19回人工知能学会全国大会は、2005年6月15日(水)〜6月17日(金) 北九州国際会議場にて開催された。本研究チームは、6月15日(水)午前に、「近未来チャレンジ:日常言語コンピューティング」というセッションを開催し、8件の口頭発表、および、口頭発表終了後、座長による総括を行うセッションを開催した。

それぞれの発表内容の日常言語コンピューティングの枠組みへの関連を図3に示す。

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図3各研究内容の日常言語コンピューティングの枠組みへの関係

選考結果を表1、表2に示す(表1、表2の出典元は「近未来チャレンジ」HP)。

表1 アンケート集計結果
kinmirai_19_res1.jpg


表2 各項目の平均値比較
kinmirai_19_res2.jpg

いずれも日常言語コンピューティングは高い評価を得ていることがわかる。今年度のサバイバル達成により、日常言語コンピューティングは最終目標である5年間のサバイバルを達成し、近未来チャレンジを卒業した。1999年から近未来チャレンジが始まり、日常言語コンピューティングのサバイバル達成まで、およそ32団体がチャレンジを試み、その内、日常言語コンピューティングを含む3団体のみ最終目標を達成した。


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