機能性RNA工学研究室での研究
I

RNAi (RNA interference)という現象が注目されています。二本鎖RNAがその塩基配列特異的に同じ塩基配列を持つmRNAを破壊するのです。動物や植物ではこの機構によって特定の遺伝子の発現が制御されていることが分かってきました。RNAiは人工的に誘導することが可能です。遺伝子工学的に調製した二重鎖RNAを細胞に導入することによって、その塩基配列特異的にmRNAを破壊することができるのです。特定のmRNAの機能を抑制したら何が起こるでしょうか。 もしもそのmRNAの機能を代替する他の遺伝子があれば、何事も起きないかもしれません。そうでなければ何か異常が起きるでしょう。適当な評価方法で解析すればそのmRNAの役割が明らかになるはずです。またその作製した二重鎖RNAは、応用可能な機能性分子としても注目されます。

機能が十分に分かっていない遺伝子の中にも、重要あるいは有用な生物機能に 関わるものがあるはずです。私たちの研究室ではそれを明らかにすることを目標にしています。そのために人工的にRNAiを誘導する技術を利用します。私たちは、short hairpin RNA (shRNA)と呼ばれる人工配列の分子ライブラリーを効率よく作る新方法を開発しました。ループ・ステム・ループ法という名前をつけました。これを利用して、がん細胞の増殖を抑制する有用なshRNAを見つける研究を行っています。その遺伝子塩基配列の解析を支援するために、専用のバイオインフォマティックス「SPICE」を開発しました。

SUGYSUN Bioinformatics tools

 

この研究システムを使って、私たちは有用な人工配列の核酸を得ることに成功しました。がん細胞の死を誘導する核酸です。詳細に調べたところ、この核酸は小胞体ストレスを引き起こして細胞死させていました。この核酸がTransmembrane protein 117 (TMEM117)遺伝子(私たちが調べる前は、その機能は未知でした)の発現を抑制したことで、細胞死のシグナルが流れたのです。この大発見は、私たちの研究が世界で最初です。研究室では、TMEM117の解析を進めていて、この研究分野をリードしようとしています。

関連した主な研究テーマ

(1) TMEM117遺伝子の機能解明

(2) がん細胞死・老化・分裂に関わる人工核酸の探索

(3) 人工知能・がん幹細胞などを利用した、新しい細胞評価系を構築


II

微生物の中には、私たちから見ると特殊な働きをするものがいます。有害な六価クロムを無害な三価クロムに還元する微生物は、六価クロムによる環境汚染を浄化するバイオレメディエーション 法に有用と考えられています。私たちの研究室では、そのような能力をもつ新規な細菌を発見しました。外部の研究機関と共同で解析を進めた結果、この細菌はDermacoccacea科の属レベルで新しい放線菌であることが証明されました。私たちはこの細菌をFlexivirga alba ST13Tと命名しています。新属名がFlexivirgaで、新種名がalbaです。ST13は細菌の株名です。上付き文字のTは、基準株であることを示します。この細菌はその属種の基準株として世界で広く利用される可能性があります。
 

クロムは非常に安定で見た目が美しいことから、表面処理加工の材料として工業的によく使用されます。 一方、人々の環境に対する関心が高まっています。私たちの研究室では、Flexivirga alba ST13Tを用いた六価クロム汚染環境浄化法を研究しています。

関連した主な研究テーマ

(1) 六価クロム還元能を有する放線菌Flexivirga alba ST13Tの遺伝子解析

    研究の一部が紹介されました

    メッキ専門誌で紹介されました


III

幹細胞の研究が注目されています。幹細胞とは様々な細胞に分化することのできる特別な細胞です。プラナリアには脳をも再生できる幹細胞が存在します。ヒトの場合、脳や骨髄や皮膚に幹細胞が存在して神経細胞、血球細胞などを再生することができます。プラナリアはヒトと多くの違いをもっていますが、遺伝子の塩基配列を比較すると似ているものもあることが分かってきています。そこでプラナリアの幹細胞関連遺伝子の研究が非常に有意義であると考えれています。

私たちの研究室ではRNAiの手法をプラナリアに適応して、プラナリアの再生に関する遺伝子を研究します。この成果が再生医療の発展に役立つことを期待しています。

関連した主な研究テーマ

(1) プラナリア再生における抗酸化物質コエンザイムQの役割解明

コエンザイムQは呼吸に必須な化合物です。もう一つの重要な機能として脂質の酸化を保護する作用があり、細胞膜等が酸化するのを防いでいます。コエンザイムQを自ら合成できないプラナリアは再生能が著しく低下し、組織の恒常性を維持できなくなります。しかし、プラナリアにビタミンEの1つであるアルファトコフェロールを餌に混ぜてあらかじめ投与すると、回復することを発見しました。細胞膜の酸化予防は再生に大切と考えられます。詳しくは<こちら>を参照ください。


    研究が紹介されました